どんなに美しいデザインや完璧な文章を作成しても、印刷工程の仕様を理解していなければ、意図しない仕上がりや重大な「印刷事故」を招くことになります。最終回では、データフィニッシュから校正、製本に至るまでの実務ノウハウを紐解きます。
1. 印刷事故を防ぐデータフィニッシュと入稿ルール
校了(デザインや文字の修正が完了した状態)となったデータは、最終チェックである「データフィニッシュ」を経て印刷所へ渡されます。プロセスカラー(CMYK)印刷において特色(スポットカラー)が混入していないか、意図しないレイヤーが残っていないかを厳重に確認します。
オーバープリントと黒(ブラック)の罠
印刷現場で最も多いトラブルが「黒」の扱いです。背景色の上に黒い文字を乗せる際、わずかな版ズレで白い隙間ができてしまうのを防ぐため、K100%の細かい文字には必ず「オーバープリント(ノセ)」を設定します。
- スミベタ(K:100%): 本文の文字や細い線に使用。版ズレの影響を受けない。
- リッチブラック(C40/M40/Y40/K100 等): 4色掛け合わせで深みのある黒。背景や広面積に使用。細文字にはNG。
- 4色ベタ(C100/M100/Y100/K100): インク総量が限界を超え、裏移りなどの大事故になるため絶対使用禁止。
2. 用途に合わせた印刷・製本・用紙の選び方
印刷の版式は、大部数に適した「オフセット印刷(平版)」、パッケージ等に使われる「グラビア印刷(凹版)」など、目的に応じて選択します。近年では版を使わず小ロット・短納期に対応できる「オンデマンド印刷」も主流になりつつあります。
また、用紙選びにおいて見落とされがちなのが「紙の目(紙目)」です。冊子を作る際、綴じ側(ノド)に対して紙の目が「平行(順目)」になるよう指定しなければ、ページが開きにくく、背割れを起こす不良品となってしまいます。
3. 品質の要!校正実務とJIS記号
誤字脱字やレイアウト崩れを防ぐ校正作業は、複数回のループ(初校、再校、三校…)を経て行われます。色味の確認が必要な場合は「本紙校正」などを手配します。
紙のゲラ(校正紙)に赤字を入れる際は、誰が見ても誤解のないよう「JIS規格校正記号」を用いるのが鉄則です。引き出し線は交差させない、縦組みなら右へ、横組みなら上へ引き出すといったルールを遵守します。現在では、PDFの注釈機能を使ったデジタル校正も普及しており、ツール上で「置換」や「打消し線」の指示を明確に残すスキルもディレクターには求められています。